赤ちゃんが虐待・殺害されたのに母親も関係者も全員無罪の「なぜ」

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渋谷の道玄坂の通称「風俗ビル」で、生後3ヵ月の赤ちゃんが遺体となって見つかった。 2013年の11月1日のことである。 この赤ちゃんを死へと追いやったのは、風俗業界で働く3人の10代の女たちだ。だが、その3人は誰ひとりとして赤ちゃんの死の責任を問われなかった。 私は児童虐待事件を追った『「鬼畜」の家 わが子を殺す親たち』で、「親になり切れない親」について描いてきた。 このような親は、かなりいると考えられる。虐待報告件数は年間10万件を超えていて、日本小児科学会の推計では約1日1人の子供が虐待で命を落としているとされていることからも、その深刻さはわかるだろう。 今回の事件を例に、「親になりきれない親」が事件を起こすまでの経緯を書きたい。(事件の内容は、『「鬼畜」の家』ならびに『新潮45』2017年5月号が詳しい) ■梅毒に感染したまま出産 その赤ちゃんの母親は、保奈美(仮名、事件当時19歳)といった。長野県の生まれで、塾の教師である父親と、元銀行員の母親との間に生まれた長女だ。 保奈美は幼い頃から両親に厳しく育てられてきた。母親の家族が銀行や県庁に勤めていたこともあり、同じような道に進んでほしかったのだろう。小学校時代には様々な習い事をさせられたという。 だが、保奈美はそうした親の大きな期待に応えることができなかった。中学まではブラスバンドでがんばっていたが、高校に上がってからは不良仲間とつるむようになり、度々両親ともぶつかった。そして高校を卒業後は、家出をして東京へ出て水商売をはじめる。 保奈美の妊娠がわかったのは、1年後のことだ。結婚するつもりもなく、かといって育てるつもりもない。どうしようか悩んでいるうちに臨月にさしかかり、中絶することもできなくなった。 追い詰められた彼女は子供を産んで特別養子に出すことに決め、特別養子縁組の支援団体Babyぽけっとに連絡。そのまま茨城県土浦市にある同団体の寮へ入った。病院の検査で彼女は梅毒に感染していることがわかったが、治療する時間もなく、そのまま出産することになった。 病院でお産を終え、生まれたのは娘の唯乃ちゃんだった。同団体の代表の岡田卓子は特別養子縁組に必要な書類を用意し、保奈美に署名をさせた。だが、2枚目にさしかかった時、彼女はぴたりとペンを握る手を止めた。様子がおかしい。 「どうしたの? 赤ちゃんを育てたいの?」と岡田は尋ねた。 保奈美はうなずいた。赤ちゃんを産んで顔を見た途端に母性本能が芽生え、育てたいと考え直す女性はいる。岡田は、実家に帰ってきちんと家族のサポートを受けながら育児をするという約束をした上で、保奈美が唯乃ちゃんを育てることを認めた。 ■JKリフレのホステスに育児を押し付ける しかし、約束は果たされなかった。 長野の実家に戻ってから、わずか1ヵ月後、保奈美は両親と仲違いして、唯乃ちゃんを抱いて再び家出をしたのだ。向かった先は、渋谷の道玄坂にあった「風俗ビル」だった。 ここには、保奈美のヒモである剛(仮名)という男が暮らしていた。JKリフレ店の開業に関わっていて、同じ部屋にJKリフレのホステスとして働く予定の17歳の少女2人を住まわせ、危険ドラッグをやっていたのだ。 保奈美は剛と話し合い、唯乃ちゃんを17歳の少女2人に預け、自分は風俗店で働いて生活費を稼ぐことにした。その結果、唯乃ちゃんは危険ドラッグとタバコの煙が充満する男女の部屋に置き去りにされることになった。 少女2人は、唯乃ちゃんを押し付けられる形で世話をすることになった。だが、生後1ヵ月の赤ん坊の世話は簡単ではない。1日に何度もオムツを替え、ミルクを与え、夜は数時間おきに泣くのをなだめなければならない。育児経験のない彼女たちが危険ドラッグをやりながら、母親を演じられるはずもなかった。 少女2人は育児が面倒になり、ストレス発散のため唯乃ちゃんに対する虐待をはじめた。危険ドラッグの勢いも加わって、それは凄惨なものとなった。 殴る蹴るの暴行を加える、顔を浴槽の水に沈める、口や鼻に指を突っ込む……。あまりの激しさから、唯乃ちゃんの呼吸が止まり、人工呼吸をして蘇生させたこともあった。 しかも、あろうことか、2人は虐待の様子を、まるで記念撮影するかのようにチェキ(インスタントカメラ)で撮影していたのだ。 事件が急展開を見せるのは、保奈美のヒモである剛が別件で逮捕されてからだ。 部屋から剛がいなくなり、保奈美もほとんど養育費を入れなくなった。少女2人は、世話をしてもイライラするだけだと話し合い、「唯乃ちゃんの面倒を見るのを完全にやめよう」と話し合った。それはミルクさえ与えないという非情なものだった。 その直後に、保奈美が久しぶりにマンションに戻ってきて唯乃ちゃんを3ヵ月検診のために長野へ連れて行ったが、帰ってきてからはまた2人のもとにもどされたことで、ネグレクトが再開される。そして11月1日の未明に、唯乃ちゃんは体をピンと真っ直ぐに伸ばした状態で、悪臭を放ちながら死亡しているのが、2人によって発見されるのだ。 ■「やっと死んだか」 119番通報した時、少女2人は「起きたら死んでいた」と説明していた。だが、警察は唯乃ちゃんの死に異変を察し、事件性を疑った。 理由としては、虐待の様子を克明に写した写真が見つかったこと、唯乃ちゃんの首にひも状のもので絞められたような痕が残っていたこと、そして、少女のうちの1人がもう1人が殺したのではないかと証言したことだ。 事情を聞いてみると、唯乃ちゃんが死んだ日の晩、ひとりの少女は風俗店で朝まで働いていたが、もう1人はクラブで遊んだ後に、マンションで唯乃ちゃんと2人きりで部屋に寝ていた。風俗勤めをしていた少女が朝六時過ぎに帰ってきて、唯乃ちゃんが死んでいるのを発見した。その時に、部屋に居た少女はこう言ったらしい。 「やっと(あるいは、「ようやく」)死んだか」 さらに、その後、地元の男友達に「赤ちゃんを殺した」というような発言をしていたことが明らかになっている。 こうしたことから、警察は、その晩部屋にいた少女人が、唯乃ちゃんの首を絞めて殺害したのではないかと考えた。そして状況証拠をそろえた上で、傷害致死で起訴したのである。 裁判では事件の当事者たちが代わる代わる証人として立った。だが、彼らの行動や口ぶりは一様に常識を逸脱していた。 唯乃ちゃんを「チビ」と呼び、首を絞める等の虐待をした理由を「エクスタシーを感じたから」と豪語し、事件の直後には地元の悪友たちとともに集団でラブホテルに行っていたことまで明らかになった。 少なくとも、彼女たちしか唯乃ちゃんの命を守る人はいなかった。にもかかわらず、その自覚がまったくない。赤ん坊の命を命とも思っていない言動だ。 しかし、裁判では密室で起きた事件であるがゆえに、検察側は明確な証拠を十分にそろえることができなかった。そのため、裁判官が出した判決は以下だった。 「無罪」 法の上では唯乃ちゃんの死は、誰のせいでもない、とされて片付けられたのである。 ■判決日に「ポッキー買いに行きたい」とツイート 裁判が終わった後、私は唯乃ちゃんの母の保奈美に会いに行った。 育児放棄をして、子供の世話を少女2人に任せていたのは彼女である。一体、何を思っているのか知りたかったのだ。 ところが、彼女は地元長野のクラブでDJをやって遊びまわっていた。初公判の日には男2人と居酒屋で酒を飲む画像をツイッターにあげ、判決の日は「今すぐポッキー買いに行きたい! でも寒い」と書き込んでいた。まるで、事件のことなど、忘れたといわんばかりである。 そんななかで、唯一、唯乃ちゃんの死を胸にとどめているのは、出産をサポートしたBabyぽけっとの岡田卓子だけだ。彼女は言う。 「あの事件は、私に子供を育てられない母親が存在することを教えてくれました。だからこそ、特別養子縁組をサポートする団体を運営している以上、きちんとそういう母親たちから子供を預かり、育てることのできる夫婦に引き渡すことの大切さを感じました」 この事件ばかりでなく、拙著『「鬼畜」の家 わが子を殺す親たち』では、虐待家庭を3代までさかのぼり、なぜ親が我が子を殺したのか、そして子供を育てられない親とはどういう大人なのかを明らかにした。 そうした親に対してどういう取り組みをすればいいのか。「親教育」も1つだろうし、岡田が取り組んでいるような「特別養子縁組」も1つだろう。 せめて、こうした事件が闇の葬られることなく、第2、第3の事件の発生を防ぐ教訓として活かされることを願っている。 「親子愛」という粉飾が家族を追い詰める (出典:livedoorより)
かなり悲惨な事件だが、こうなる前に何とかならなかったのかという想いを拭えない。 それにしても、関係者が全員無罪とはどういうことだろうか。 人が一人死んでいるのだ。 しかも、誰がどう関わったか、かなりの部分が明らかになっている。 母親の保奈美は、少なくとも育児放棄は間違いない。育児を放棄した結果子供が死んだのに、何らかの罪に問われることはないのだろうか。不思議というほかはない。 また、赤ちゃんを預かった2人の少女は、途中からミルクを与えなかったことを告白している。ミルクを与えなければ、死ぬことはわかっているはずだ。これでも何の罪にも問われないというのか。 検察は犯罪を立証するだけの十分な証拠を揃えられなかったというが、それは殺人罪で立件できるほどの証拠がなかったという意味だろう。殺人罪の十分な証拠はなくても、その手前の罪状には問えるのではないか。 警察は虐待の様子を撮影した画像を多数押収している。虐待は明らかなのだ。少なくとも、傷害致死に問えるはずだと思うのだが、違うのか。いくつもの証拠がありながら、全員が何の罪にも問われないなら、検察の無能を指摘する声も出てきそうだ。 記事を読んでみると、この事件は防げたのではないかという気がしてならない。キーポイントは保奈美の両親だ。 保奈美は子供を出産後、長野の実家に帰ったが、両親と仲違いして家出をした。 このあと両親はどうしたのだろうか。 娘と孫を探したのだろうか。記事にはそのことが書かれていないからわからないが、この時点で両親が娘と孫の身柄を確保できていれば、こういう結末にはならずに済んだ。 また、保奈美は3か月検診のために、子供を長野に連れて行っている。このとき、実家には寄っていないのだろうか。記事ではそのことに触れていないが、その頃には2人の少女による虐待が行われていた。 実家に寄ったとすれば、両親は孫を見て変だと思わなかったのだろうか。 また、3か月検診を行った医療機関の医師や看護師は、虐待の痕跡に気づかなかったのか。虐待を受けている子供を検診して、医療のプロが何の異状も感じていないことに、どうしても疑問が残る。 人が一人死んだ事実は重い。一番悪いのは誰かといえば、それは母親の保奈美に決まっている。しかし、彼女は何の罪にも問われていない。 さらに、虐待した上にミルクも与えなかった少女たちまで無罪なら、亡くなった子供にとって、運の悪いことが重なりすぎたとしか言いようがない。 それにしても、これほどやりきれない事件も珍しい。いや、事件と呼んではいけないのかもしれない。誰も加害者がいないのだから。